タミヤ本社ロビーには数々の名車たちが展示されている。そこには同社のプラモデル&ラジコン開発に大きな影響を与えたポルシェ911やロータスやティレルのF1マシン、さらにはNSXのGTカーの姿もある。その一角でここへ足を運ぶ人々をにこやかな表情で迎えてくれるのが1979年に登場し人気を集めた電動ラジオコントロールカー「ワーゲン・オフローダー(SAND SCORCHER)」の1/1モデルである。

ワーゲン・オフローダーはカリフォルニアを中心に流行したオフロードカルチャーから誕生したモデルで、通称”バハ・バグ”とも呼ばれるフォルクスワーゲンのオフロードレース仕様車である、このモデルを忠実に再現したタミヤの電動ラジオコントロールカーは発売開始から瞬く間に世界中の子供たちを夢中にさせた。ドイツ・ヴァイデンでヴィンデージ・ワーゲンのカスタムショップを営む、ウォルター・イェリネクもそのひとりだった。彼がワーゲンをこよなく愛すきっかけになったのは他でもなくタミヤから販売されていたこのワーゲン・オフローダーだったのだ。

2009年のこと、ウォルターは自身がショップを開くきっかけになったこのワーゲン・オフローダーをどうしても手に入れたいと考えていた。しかしすでにこのモデルは絶版となり入手は困難。そこで彼は自身のガレージで憧れのクルマを作ることにした(しかも1/1スケールで!)。ウォルターはベースとなるサンルーフ付き1968年式ビートルを入手すると、当時のボックスアートを何度も見直し、シャーシ、エンジン、ボディとまるで電動ラジオコントロールカーを組み立てるかのように1/1のワーゲン・オフローダーを組み上げていった。

ちょうどそこの頃、ドイツから遠く離れた静岡のタミヤではニュルンベルクで行われるボビーショーに、ワーゲン・オフローダーの販売開始30周年を記念した復刻版発売を発表する準備をしていた。両者のワーゲン・オフローダーへ想いはなんとドイツと日本、9000kmもの距離を縮め、その復刻版のお披露目の場にウォルターの1/1のワーゲン・オフローダーを展示するという話に急展開。こうして彼の作り上げた1/1 ワーゲン・オフローダーと復活したワーゲン・オフローダー(2010)はこの年のショーで注目の的となり、世界中のメディアが彼とワーゲン・オフローダーのストーリーを紹介した。

そのストーリーに感銘をうけたタミヤの社長は、この車両を日本へ運び、本社ロビーに展示することを決めた。これがこのクルマがこの場所で展示されるまでの心温まる物語。もしタミヤ本社へ足を運ぶ機会があれば、ウォルターの想いや情熱を想像しながらじっくりこの1/1 ワーゲン・オフローダーを眺めてほしい。なおタミヤのワーゲン・オフローダー(2010)は2010年2月に復刻、現在もスポット生産が行われている。

タミヤ ワーゲン・オフローダー: http://www.tamiya.com/japan/products/58452sandscorcher/

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