手に汗にぎるカーアクションで毎回見る者を楽しませる映画007シリーズの中でも、とくに語り継がれる名シーンといえばシリーズ第10作目として1977年に公開された「007わたしを愛したスパイ」で、ロータス・エスプリが潜水艇に変身をするというあのシーンだろう。スーパーカーが水中を移動するシーンに、当時の子供たちは大興奮したものだ。時は1970年代、このシーンはもちろん特撮によるもので、撮影には何台ものクルマがアングルごとに用意されるというとても大掛かりなものであったという。

それから数十年、本当に水中で楽しめるスポーツカーが現れた。その名はsQuba(スキューバ)。スイスを拠点に斬新なクルマをデザイン&製作するリンスピードが製作したコンセプトカーである。リンスピードは毎年世界中をアッと驚かせるクルマを世に送り出しているメーカーで、ここ数年はトレンディな自動運転車を独自の視点で開発し発表している。そんな彼らがこれまでに生み出したクルマのなかでも特に面白いのがこのsQubaだ。

2008年にジュネーブで行われたモーターショーで初公開されたこのクルマはロータス・エリーゼをベースにリチウムイオンバッテリーを搭載した電気自動車だ。陸上では最高時速120kmで走行可能し、なんと水中では水深10mまで潜る事ができる。オープンモデルゆえ乗員は水中ゴーグルにボンベというスキューバダイビングさながらの装備が必要になるが、陸上と水中、その両方を楽しめる夢のようなクルマなのだ。

「この30年、私は水の中を飛び回れるクルマをどうやったら作れるのかを考えていました。その夢がようやく実現しました。水中で魚のように動くクルマを作るために必要な耐水性と水中での耐圧性を確保するのは容易なことではありませんでしたが、私はフィクションをノンフィクションにしたかったのです」とリンスピードのフランク・リンダーネヒトは言う。sQubaの市販予定はないというが、未来のクルマはこんな自由な発想から誕生してくるのかもしれない。

KURUMAG.(No.7):http://kurumag.net/backnumber/kurumag-no-7/
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