ーー まずはビリーさんがクルマに興味を持ったきっかけから教えてください。

僕が最初にクルマに興味を持ったのはホットウィールだね。何百台も持っていたよ。そのあとクルマからは少し離れるんだけど自転車にハマってね。近所にスケートパークがあったのでよく乗りにいっていたよ。その時に楽しかったのがパーツの交換だった。フレームを変えたり、ハンドルバーを変えたり、とにかく自分好みのカッコイイ自転車にするのに夢中だったんだ。乗り物を組み立てたり、バラしたりする楽しさはこの時に覚えたんだ。

ーー エンジンが付いた乗り物との出会いは?

3輪バギーが最初だよ。アメリカには3輪と4輪の小型バギーがあるんだけど、父は僕が危なっかしいからと3輪のものはダメだと言っていた。でもおかまいなしさ。3輪バギーを手に入れた僕は、地元で一番速かったんだよ。オフロードで仲間と競うようになると今度はバイクに興味を持ち始めてね。ただ心配性の父だったから「おれはお前を絶対にレース場には連れて行かない!行くなら免許を取ってから自分でいけ」と言われたんだ。そんな時、近所に住む幼なじみのお父さんがレース場に連れて行ってくれることになったんだ。それがグレッグ・トレーシー(レーシングドライバー&レーサー)のお父さんなんだよ。今となってはパイクスピークで数々の優勝記録を持つグレッグだけど、彼とは17〜18歳くらいまで一緒にバイクに乗っていた。その後、二人でゴーカートに夢中になってね、いつしか四輪の世界に足を踏み込んでいたんだ。

しかしながら僕は四輪ではバイクの時のように速く走れなくてレーサーになるのは断念したんだ(笑)。でもすっかりレースの虜になっていたので、僕はクルーとしてインディカーのチームに加入した。ただ僅か2年で僕の人生は大きく変わることになったんだ。当時、別のチームで走っていた親友であり幼馴染のグレッグがひどい事故に巻き込まれてね、僕はそのショックでチームを離れた。そしてコマーシャルや映画のスタントをするようになったんだ。でも常に頭をよぎるのがあの時のアクシデントなんだ。今では年間200本近いコマーシャルや映画に使うクルマの制作を手がけているけど、予算がどうあれいつだって安全は第一に考えている。これが僕のクルマ作りのモットーになったんだよ。

ーー ハリウッドでのコマーシャルや映画の世界には元々接点があったのですか?

ハリウッドに関わるきっかけは親友であり今も一緒に仕事をしているマウス・マッコイのお父さんがこの世界で仕事をしていたからなんだ。マウスはとにかく真剣にレースに取り組む人間で勝つためなら友人すら作らないようなストイックなヤツなんだ。14歳の頃、グレッグと僕はレース場でマウスに出逢ったんだ。面白いことにそんなレース一筋の男が、僕らの親友になった。マウスはすぐにトップライダーになり、ホンダのファクトリーライダーとしても活躍するようになった。彼は容姿もよくて、アメリカのモトクロス界のスターになり、泥まみれの僕らの世界にたくさんの女性ファンをつれてきたんだよ。そんな彼がある日、お父さんの仕事の関係で映画撮影のアシスタントをし始めたんだ。そして彼からいろいろな話を聞くうち興味を持ち始めクルマのコマーシャルや映画を制作するプロダクションへと転職を決めたんだ。当時僕が就職したのは大手プロダクションだったので、メルセデス・ベンツやポルシェなどの撮影で世界中を旅したよ。この会社でドライバーやカービルダーとして14年間働いた。そして4年前に自分自身で会社を立ち上げることになったんだ。自分の会社ではフェラーリやブリヂストン、フォルクスワーゲンのコマーシャルに関わっているんだよ。

ーー ビリーさんはコマーシャルだけでなく、いろいろ面白いプロジェクトにも関わっていますね。

そうだね。コマーシャルのほかにホットウィールの1/1スケールカーの制作やソニー・プレイステーションの“ファースト・ラブ”(マリオ・アンドレッティの最初のレーシングカーを復刻させるプロジェクト)、映画ニード・フォー・スピードなどカーアクション映画のクルマも手がけているんだ。

ーー これまでに自分で手がけたクルマでお気に入りのクルマはありますか?

いろいろなクルマを手がけてきているからなぁ。ホットウィールのスタントで、タナー・ファウストがジャンプのワールドレコードを記録したクルマもゼロから作り上げたから思い出がたくさんある。でも強いて挙げるなら、ダースカー(ホットウィールがデザインしたダース・ベイダーカー)だね。このダースカーはサンディエゴで行われたコミコンのために作ったクルマなんだ。オリジナルのデザインはホットウィールのデザインチームにいるブライアン・ベネディクトで、彼のスケッチをベースに実車を作るのだけど、実際に走るようにするにはいろいろと考えなければいけないこともある。ここが腕のみせどころさ。C5コルベットシャーシをつかって制作したこのクルマは、ホットウィールのデザイナーたちからも絶賛されたよ。彼らは様々な自動車メーカーでの経験があったり、とても自由な発想を持つ世界最高のカーデザイナー集団なんだ。そんな彼らに認められるのは嬉しいことだね。

ーー これからどんなクルマを作りたいですか?ミライのクルマづくりなどにも興味ありますか?

今はハーレーのカスタムビルダーをやってるローランド・サンズのクルマやシックスフラッグなどいくつかの遊園地から依頼をうけたクルマを制作しているんだ。もちろんホットウィールとのプロジェクトも進んでいる。これからどんなクルマに携わるかまだわからないけど、安易に”ミライのクルマ”とか夢のクルマとかを作る気はないんだ。僕は元々モータースポーツファンだからね。ミライをテーマにしたクルマであっても、楽しい走りを予感させてくれて、実際に乗っても最高に面白い。そんなクルマを作り続けていきたいね。

・KURUMAG. 7号:http://kurumag.net/backnumber/kurumag-no-7/

text=KURUMAG. photo=Yujiro Otsuki, Shigeyuki Ishikawa
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